20世紀末にたった一人でカメラメーカーを立ち上げ
「安原一式」という自らの名前の入ったカメラを作った人の物語です。
プロジェクトX的な苦労の末やっと…的な話が中心ではなく
どちらかというと技術的に行き詰まり
やがてデジカメへと主役を明け渡していく20世紀末のフィルムカメラ産業の様子を
一人の技術者として描いている点がおもしろい。
カメラの世界にはデジカメから入った私からすると
90年代のカメラ事情を知る上でとても参考になりました。
カメラの歴史的読み物として大変分かりやすくなっています。
あと著者はカメラが好きなユーザーであると同時に
カメラを作る技術者でもあり、世の中のカメラマニアに対し
かなり苦言を呈しております。
(耳の痛い意見も多いのですが…)
ものづくりを担うメーカー側からの苦労、しがらみ、限界が
たった一人だからこそ実現できた製品の開発を通して語られています。
カメラ好き(写真好きではなく)の人にこそ是非読んでもらいたい一冊です。